オフィス街の顔とは別に、毎週水曜には店舗前に大阪産の農畜産物や加工品、魚介類を集めた「大阪マルシェ ほんまもん」の市が立つなど、ゆったりと広い歩道は、日々のお散歩コースとしても楽しめそう。
この日、棚に並んだ硝子の器たちは、夏の緑を淡く映し込みながら、こちらの視線が向くのを静かに待っているようだった。

冷たい麦茶を硝子のグラスで飲むと、夏を強く実感する。
透明な肌にびっしりと浮かぶ結露の粒。
指先が濡れる感触。
氷が溶けてグラスの中で立てるかすかな音。
これらはすべて、硝子という素材が「熱」と「時間」を可視化してくれているからこそ味わえる感覚だ。
硝子は冷たさを隠さない。むしろ、その正直さこそが、夏の一杯をより涼しく感じさせてくれるといってもいい。
透明であることは、何も持たないことではない。
すべてを受け入れ、光を運び、季節の気配までも映し出す。
硝子という存在を通して眺めると、暮らしの風景が、ほんの少し、違った角度で見えてくる。
そんな硝子の魅力に触れられる場所が、大阪・淀屋橋にある。
▲大阪メトロ淀屋橋駅直結の商業施『淀屋橋odona』内ながら開放感のある雰囲気
御堂筋のイチョウ並木に面した、『淀屋橋odona』に店舗を構える「Sghr スガハラショップ淀屋橋」。
オフィス街の顔とは別に、毎週水曜には店舗前に大阪産の農畜産物や加工品、魚介類を集めた「大阪マルシェ ほんまもん」の市が立つなど、ゆったりと広い歩道は、日々のお散歩コースとしても楽しめそう。
この日、棚に並んだ硝子の器たちは、夏の緑を淡く映し込みながら、こちらの視線が向くのを静かに待っているようだった。
▲背景には御堂筋のイチョウ並木。自然光の下できらめく器を見られるのも良い
長らく関西の旗艦店として愛されてきた芦屋店を引き継ぐショップとして、大阪に移転したのは2019年のこと。
店舗からほど近い大阪天満宮に「硝子発祥の地」の石碑が立っていることを知ると、なおのこと感慨深い。
▲「Sghrスガハラショップ淀屋橋」1階のドーム
1階には、日本を代表するインテリアデザイナー森田恭通氏が手がけた繭を思わせる白いドームを大胆に配置。
硝子が生まれ、旅立っていくイメージというドームは、内側から仰ぎ見ると硝子のオーナメントが無数に吊るされており、降り注ぐ慈雨のような美しさ。
目にしたときに息を呑むか、歓声が漏れるかは、ぜひ実際に訪れて試してほしい。
▲2階へと続く階段からドーム越しに1階を眺めるのも素敵
花瓶に生けられた花、グラスに満たされたワイン、プレートに盛られた料理、涼しげな音を奏でる風鈴——硝子はいつも何かを引き立てるように存在している。
しかし、その透明な存在がなければ、花の茎の傾きも、ワインの色の深さも、料理の湯気の揺らぎも、そして微かな風も、これほど美しく見えることはないだろう。
硝子は透明であることによって、むしろ雄弁になる。不思議な素材だ。
撮影のためにいくつか器をピックアップしてテーブルに置くと、照明を受けて波紋のような影が現れた。
器そのものだけでなく、器がつくる「影」に見入ってしまう自分がいた。
硝子は、置かれた場所の光までもデザインしてしまう素材なのだ。
▲こちらは再利用性の高い硝子の特性を活かし従来廃棄していた端材を使って生み出された「Sghr Recycle」シリーズと、リサイクルカラーの製品。いろんな色の硝子くずを混ぜ合わせ溶かすため、出来上がりの色は予想できないのだとか
Sghrには、デザイナーという専門職は1人もいないそうだ。
硝子を一番よく知る職人たちが中心となり、営業スタッフや役員たちの意見も取り入れながらデザインをブラッシュアップ。こうして製品を生み出す体制がもう50年間続いているという。
添えられたポップには、それぞれの職人がその一点にどんな物語を込めたかが記されている。
▲ポップを読むだけでも、どのように使おうかワクワクしてくる
美術品として成立してしまうほどの美しさを持ちながら、そこにちゃんと、暮らしに溶け込む実用性が感じられるのは、料理を盛ったときや、飲み物を注いだときに初めて完成する美しさを、職人たちがデザインの段階から見越してモノづくりをしていたからなのだ。
なるほどそういうことか——硝子に宿る「余白」に心惹かれていたのかと、今になって腑に落ちる。
▲商品選びに迷ったらminä perhonenの制服を纏ったスタッフに気軽に相談を
こうした職人の手しごとに、もっと近づける場所が2階にあるので、訪れた際はぜひチェックしてほしい。
月替わりで、職人たちの自由制作が並ぶ作品コーナーだ。
▲「職人の作品展」ほとんどが一点物。この月のテーマは「ひんやりスイーツの器」
展示のテーマが切り替わる月初めに、必ずここへ足を運ぶ常連の方もいるらしい。
棚を一巡して、その月だけの一点に出会ったなら、迷わず連れて帰るのがお決まりのスタイル。
▲虹色のシャボン玉のような風鈴は夏限定商品
硝子との付き合い方は人それぞれだけれど、こんなふうに毎月ひとつずつ、
暮らしに硝子を取り入れていくのは、ワクワクするに違いない。
なんだか素直にお手本にしたいと思える暮らし方だった。
来年の夏には、どんな景色が見られるだろうか。
Sghrスガハラショップ 淀屋橋
https://www.sugahara.com/
大阪市中央区今橋4-1-1 淀屋橋 odona 1F/2F
11:00〜20:00
無休(不定休あり)
